和裁士からの伝言板

和裁士の「はたる」です。一級和裁技能士が着物や和裁のあれこれを綴ります。

和裁士の道具その1

僕が普段使っている道具を紹介します。

和裁士だったらみんな使っているよね!

という物もありますし、

使う人もいるけど、使わない人もいるよ〜。

という物もあります。

特性や使い方などを書いてみようと思います。

 

 

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縫い針

縫い方や縫う物によって使い分けます。

種類が色々あります。

「四ノ一(しのいち)」とか「三ノ五(さんのご)」などと数字を使って表記されています。

最初の数字は太さ。数字が大きいほど細くなります。

次の数字は長さ。数字が大きいほど長くなります。

「つむぎえりしめ」とか「がすくけ」と言葉で表記されている事もあります。

曲がると真っ直ぐ縫えなくなります。

つまんでクルクル回すと曲がっているかどうかがよく分かります。

写真、右から三ノ五(がすくけ)、四ノ一、四ノ三、つむぎえりしめ。

 

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指貫(写真左手前)

ゆびぬきと読みます。

中指の第一関節と第二関節の間にはめて、針の頭(糸を通す方)を押します。

金属製と革製があります。

革製(牛の革)の物を使っています。

消耗品です。

硬い布を縫うと針が指貫を突きぬける事がありますが、激痛です。

 

小鋏(写真右中央)

糸を切ったり、布に切り込みを入れたりするのに使います。 

地元の新潟で買いました。3,700円。お高め。

後輩がこれを使っていて、とても良く切れるので調べたら、実家からそれほど離れていないお店のものでした。

帰省した時に直接お店に行って、「これ下さい」と言ったら、「危ないので素人さんには売れません」と言われた(^_^;)

そろそろ研ぎをお願いしたい感じです。

 

裁ち鋏(写真上)

布を断つ時に使って使います。

小鋏は使わず、全て裁ち鋏を使う人もいます。

先端でしっかり切れないといけません。

研いでくれる人がいなくて困っています。

普通の刃物の研ぎ方とは違うらしい。

 

ヘラ(写真左中央)

布に標(しるし)を入れる時に使います。

布に当て、擦り付ける事で標を入れます。

写真のヘラは牛骨。手に入れにくくなりました。理由はよくわかりません。

最近では水牛の角で作られたヘラがあります。

標はできるだけ細くしたいのですが、使う程に摩耗していくので刃物の様に砥石で研ぎます。

研ぎすぎると布が切れるので注意。

先端を椿油に浸けて滑りを良くします。

 

目打ち(写真右手前)

用途は様々。

表返した羽織の衿先の角を出したり、絡まった糸をツンツンして解いたり。

細かい所のツンツン系(?)はこれを使います。

頻繁に使っているのは自分だけのような気もする…

 

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物差し(写真手前と右)

尺差しとメートル差しがあります。

尺差しは1尺と2尺、メートル差しは50センチと1メートルの物差しがよく使われます。

後藤和裁ではメートル法を採用しているのでメートル差しを使っています。

素材は竹です。

2㎜単位で目盛があり、片端の10㎝間は1㎜単位で目盛があります。

1㎜単位の目盛は細か過ぎて見間違えやすいので使わないようにしています。

奇数㎜を見る時は2㎜単位目盛の間を見ます。

定規ではありません。物差しです。

 

霧吹き(写真中央)

ポンプで中の空気を圧縮させる事により、連続して霧が出ます。

シュッ、シュッ。ではありません。

シャーーーーーーッです。

綿の当て布に霧を吹いて湿らせ、その当て布を生地の上に置いてアイロンを当てる事で生地に湿気を与えます。

非常に細かい霧が出るので、ムラなく湿らせる事ができます。

噴霧口にゴミが詰まると上手く噴霧できなくなったり、ポンプのゴムが摩耗すると圧縮できなくなるのでメンテナンスが大切です。

7,000円とか8.000円とかした気がする。高い。

でもお値段以上。

 

けさん(写真左)

文鎮。

圭算(けいさん)が訛った。

易の算木と形が似ている事からこの名が付いた。

美術館などで巻物などの書物を抑える文鎮もけさんと呼ばれているらしい。

交や享などの漢字の「なべぶた」は「けいさんかんむり」とも言う。

うん、雑学に逸れ過ぎ。

布を抑えるために使います。

小さい方で1kg、大きい方は2kgあります。

金属の塊。

落とすと危ない。

サビが出る事があるので布で包んであります。

 

 

馴染みのある物から珍しいものまで、色々ありますね。

良い道具を長く大切に使いたいですね。

今回はこの位にしましょう。

第2弾はまた今度。

 

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