男単長着を男単羽織へ仕立て替え その1
男物の単長着を男物の単羽織に仕立て替えました。
着物は直線裁断により仕立て替えができる事が大きな特徴です。
色々な方法で色々な仕立て替えができます。
さて、今回はどの様に仕立て替えたでしょう。
ご紹介していきたいと思います。
今回はお客様からの依頼のものですが、掲載の許可を頂きました。
ありがとうございますm(_ _)m
古着の麻の単長着を購入されたそうですが、身丈も裄も短いため、仕立て替えてご自身に合う羽織にしたいというご依頼でした。
お客様は単の長着の状態で持っていらっしゃいましたので、その場で寸法を測り、縫い代を確認して仕立て替えが可能かどうかを確認しました。
単長着の基本的な裁断
8つのパーツで出来ています。
身頃2枚
袖2枚
衽2枚
本衿1枚
掛衿1枚
長着裁断図です。
単羽織の基本的な裁断
9つのパーツで出来ています。
身頃2枚
袖2枚
衿1枚
マチ2枚
袖口布2枚
羽織裁断図です。
ご希望の羽織の寸法になる様に、長着のパーツを羽織のパーツへ変換させなければいけません。
長着から羽織への仕立て替えの基本
身頃2枚→身頃2枚・マチ2枚・袖口布2枚
袖2枚→袖2枚
衽2枚・本衿1枚・掛衿1枚→衿1枚
この様になります。
赤い線は新たに裁断する所。
青い線は縫い合わせる所。
実践は応用が沢山あるよ٩( 'ω' )و
確認すべき事
羽織丈
袖丈
裄(袖巾、肩巾)
衿丈
マチ丈
袖口布丈
汚れ、キズ、ヤケなど
1つずつ確認します。
・羽織丈
十分にあります。
・袖丈
長着の袖丈が長めなので大丈夫です。
・裄
肩巾。縞柄なので、背縫いで柄を合わせて縫わなくてはいけません。そこを考慮します。希望の肩巾には足りません。
袖巾。布いっぱいでも足りません。
裄は全然足りません。
・衿丈
羽織の衿は長着の衽を継いで長さがあれば大丈夫です。
長着の衿納めを少し解いて、衽の上の縫い代を確認します。
羽織の衿丈は大丈夫です。
・マチ丈、袖口布丈
裁断図を見ると分かりますが、羽織の前身頃は大きく切り落とします。これを「前落とし」と言います。
マチ、袖口布は基本的に前落としから取ります。
身頃の長さが十分にあるので大丈夫です。
・汚れなど
身頃に数ヶ所穴があります。
全体的に少しヤケがあります。
問題点はなんだろな(๑•̆૩•̆)
・裄が足りない
・穴、ヤケがある
解決策を考える(;◔◔;)))?
・穴、ヤケ
大きな穴は身頃の裾の方にあり、羽織にした時には関係無い部分なので大丈夫です。
小さな穴は裏から布を当てれば大丈夫でしょう。
ヤケはそれほど酷くは無いので、できるだけ目立たないようにします。
・裄が足りない
男物は振りが無いので、肩巾・袖巾を各々で長着と合わせる必要はありません。
裄が長着よりも長くなっていれば良いので、肩巾はいっぱいで仕立てて、袖は割りを入れて(足し布を入れて)仕立てます。
さて、袖の足し布をどこから取りましょう。
(袖丈+袖底縫い代)×2の長さの布が2枚必要です。
候補その1 長着の本衿から
本衿の長さでは足し布2枚分はありません。
2枚分取るなら本衿を半巾にする事になります。
半巾にすると8㎝位。巾が狭くてちょっと厳しそうです(๑•̆૩•̆)ブー
候補その2 前落としから
長さは十分あります。巾は10㎝程です。
(๑˃̵ᴗ˂̵)و ヨシ! イイネ!
袖の足し布は前落としから!
そうすると新たな問題が…
本来なら前落としからはマチと袖口布を取るはずでした。
どうしましょう。
マチは本衿から取りましょう、そうしましょう。
袖口布は掛衿から取りましょう、そうしましょう。
あれ?羽織の衿は( ˘•_•˘ )?
羽織の衿を作るには長着の衽・本衿・掛衿が必要です。
が、しかし、衽があれば出来てしまいます。
本衿・掛衿の部分は別の布を用意して足します。この部分は出来上がった時に見えないのです。
この様に裁断して長着から羽織にします。
長着から羽織に出来る(๑✪∀✪ノノ゙✧パチパチ
お客様に
・袖の割り入れ分の料金を頂く
・衿の足し布分の料金を頂く
・衿山に継ぎ目が出る
この事をお伝えして了承していただけたので洗い張りに出しました。
仕立てが始まります(๑•̀ω•́๑)۶
洗い張りから戻ってきました。
次回からは仕立ての様子を書きますよ(๑و•̀ω•́)و
続く…