和裁士からの伝言板

和裁士の「はたる」です。一級和裁技能士が着物や和裁のあれこれを綴ります。

男単長着を男単羽織へ仕立て替え その2

 

まずは検反

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洗い張りが出来上がってきました。

縮んでいる可能性がありますので、まずはパーツの長さと巾を確認します。

キズや汚れの位置も把握しておきます。

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問題がある部分には糸を付けておきます。

どのパーツをどの様に使うかを確認して端縫い(はぬい)を解きます。

 

端縫いとは?

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和裁は直線裁断です。

しかも縫い代は切り落とさずに全て温存しておきますので、パーツを繋ぎ合わせると元の反物の形に戻ります。

洗い張りをした後は写真の様に繋ぎ合せて縫ってあります。

これを端縫いと言います。

検反が終わったら、この端縫いを解いていきます。

 

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端縫いの糸は、直線に通って見える方を左に置いて端を切り、少し解けばあとは引っ張るだけでスルスルと解けていきます(*˙꒳˙*)‧⁺✧*

 

前落とし

羽織の前身頃は大きく切り落としてしまいます。それを前落とし(まえおとし)と言います。

左右の身頃を中表に(生地の表と表がくっつくように)して肩山で綴じて、ズレないように針で数ヶ所留めます。

前落としをする線をチャコで描きます。

着物での衿肩明は前落としに入ってしまうので影響ありません。

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みなさん、ご存知ですか?

布って、一度切ると、もうくっつかないんですよ?

前落とし。恐怖です。

間違えていたら終わりです。

色々終わります。

 

前落としでの失敗とは…

・綴じていた所が肩山では無かった…

せっかく考えた柄の配置が滅茶苦茶に(|||O⌓O;)

・中表ではなく表と裏をくっつけて綴じていた…

左身頃(あるいは右身頃)が二枚になる( ・᷄д・᷅ )

・そもそも身丈を勘違いしていた…

そのまま作り上げたら切なすぎる(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

 

恐ろしやー恐ろしやー。

しっかりと確認してから鋏を入れます。

 

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バッサリ。

恐怖を乗り越えました。

えらい٩(ˊᗜˋ*)و✧*。

 

標付け(しるしつけ)

ヘラで標を付けていきます。

写真を撮り忘れました(ノ≧ڡ≦)

 

背縫い

単なので「袋縫い」にします。

袋縫いの構造を説明します。

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青線は縫う所です。

この様に縫う事で生地の耳を隠す事ができます。

単は基本的に生地の耳は見えないように仕立てます。

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真横から見るとこの様になります。

非常に細かい事ですが、2㎜程の段差を付けます。

背を袋縫いしてキセをかけるとこの様になります。

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赤マルの中が先程の段差の部分です。

布が5枚重なる部分です。

背縫いの縫い代が無い部分は当然1枚です。

厚みに4枚分の違いが出てしまいます。

この4枚分の差を段階的に変化させるために段差を付けています。

畳んだ時の事を考えると急激に厚みが変わるのは良くありません。

段差を付けないとこの様になります。

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僅かな差ではありますが、布にとって少しでも良い状態を目指します。

 

うーん、難しい?

説明するのはなかなか難しいです(^_^;)

良く分からなかったらごめんなさい。

 

背縫いをしました。

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右後身頃のウラ側から見ています。

写真の左側が肩山の方向です。

ピンクマチ針の所が縫ってある場所です。

赤矢印の所で袋縫いをやめています。

そこから右側は生地の耳が出てきています。

黄マチ針が裾になる部分です。

耳が出てきている部分は、出来上がった時には背縫いの縫い代が見えなくなってしまう部分です。

袋縫いはどうしても厚みができてしまうので、見えなくなってしまう所は袋縫いをやめて厚みを減らします。

 

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ピンクマチ針が刺さっている所で縫ってあります。

黒くてあんまり見えない(´ー`)

ここで縫ってキセをかけると、表から見て縞が合います。

背の柄はバッチリ合わせます( ̄+ー ̄)

 

今回はここまで。

袋縫いに関しては細かく説明しました。

細かい気遣いがあるという事を知っていただきたかったので。

次回はマチ付けからですね。</p ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村