和裁士からの伝言板

和裁士の「はたる」です。一級和裁技能士が着物や和裁のあれこれを綴ります。

直すことの難しさ

寸法直しをする事が多々あります。

寸法を変えられるというのは着物の大きな特徴のひとつですね✨

でも、寸法直しって難しいんです。

初めから仕立てる事と何が違うのか、何故直す事が難しいのかを書いてみようと思います。

 

 

イメージで表します。

分かりにくかったらごめんなさいm(_ _)m

 

 

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既に完成している状態から直すということは完成度をある程度下げなければいけません。

仕立て替えではないのでゼロには戻しません。

どこまで戻すべきかを考える必要があります。

希望の寸法に直すにはどこから直す必要があるのか、図の分岐点を決めます。

 

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直しの完成はこの様になります。

 

単純に考えれば分岐点の完成度5まで戻れば良いわけですが、ところがどっこい、そんなに甘くはありません(๑•́ ₃ •̀๑)ブー

 

分岐点ちょうどまで戻って、そこから希望到達点に向かおうとすると大抵こうなります。

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分岐点以前の作業に引きつけられて希望する所に行きません。

これが理解できていないと行ったり来たりを繰り返してしまいます。

時間の無駄だし、布を傷めます。

 

ではどうすれば良いのか。

 

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分岐点より少し前まで戻り、分岐点から変わる角度を睨みつつ助走する必要があります。

 

戻りが少ないと上手くいかず、戻り過ぎると無駄になる。

心理的には無駄を避けたくなるので戻りが少なくなってしまう場合が多いと感じます。

 

ちなみに、綺麗に戻すのも難しいんです(>_<)

 

 

ここまでは寸法直しの話です。

 

さらに厄介な直しがあります。

それは失敗の直しです。

自分で失敗した部分を直すのは精神的にかなりキツイ( ̄^ ̄゜)

 

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失敗してます。

先程と同様に、失敗した所のちょうどまで戻ってもなかなか上手くいきません。

 

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こうなります。

失敗の始まりというのは、目に見える失敗の前からの事が多いのです。

最終的に希望到達点に行っていれば良いというものでもありません。

途中で歪んでいたらダメです('ω'乂)ダメー

歪みを直そうとして失敗点まで戻り、また歪む。

これをループすると心が折れます…

 

やはり失敗点より前に戻る必要があります。

失敗の予兆から直さなければいけません。

 

しかしながら、失敗だったとしても自分が頑張って縫った部分を解くのはとてもツライ。

失敗のショックを抱えながらなので普通の精神状態では無いのです。

精神状態が異常なので、正しい失敗点を見つけることすら難しく、どこまで戻すべきかの判断も上手くできなくなります。

 

和裁は「心技体」が揃っていなければいけません。

「心」が揺らぐと「技」を発揮できなくなります。

 

直す事が難しいのは、単に手間がかかるからだけでは無く、精神的な事が関わってくるからです。

 

 

僕は自分が失敗したときの対処法を持っています。

 

自分の失敗を直すときは、それは自分の失敗では無い事にします‼️

後輩の失敗を直してあげる(⌯¤̴̶̷̀ω¤̴̶̷́)✧

この位の気持ちで挑みます。

これでサクッと縫い目を解けます。

失敗した跡を綺麗に消せます。

どうよ?さすが先輩だろぅ?上手いだろぅ?

と思いながら直します。

精神的ダメージを軽減させるどころか、ややテンション上げていきます。

逆に言うと、その位の事をやらないと自分の失敗を直すのは難しいのです。

一発で直さないと更に心をえぐられます。

 

他人のせいにしている様ですが、それで良い。

 

あ、もちろん失敗の反省と検証はしますよ?

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