和裁士からの伝言板

和裁士の「はたる」です。一級和裁技能士が着物や和裁のあれこれを綴ります。

男単長着を男単羽織へ仕立て替え ラスト

羽織の衿は長いです。

長着の場合は褄下がありますから衿はそこまでで良いのですが、羽織は身頃の一番下まで衿が必要です。

通常は(羽織丈+30㎝)×2の長さで裁ち、衿先の縫い代は12〜15㎝位です。

今回は長着からの仕立て替えです。

長着にはそんなに長い布はありません。

なので、衽の布を縫い合わせて羽織の衿にします。これなら長さは大丈夫です╭( ・ㅂ・)و̑ グッ

 

さて、ここでお伝えしなければいけないのが衿の構造なのですが、

なのですが、

んが、

非常に複雑です(´-﹏-`;)

これ、誰が考えたの?マジで天才‼️

と思うくらい複雑です。

マニアック過ぎるのでサラッと読んでください。

 

羽織の衿巾は通常、女物で5.7㎝、男物で6.4㎝なのですが、布を細く切ったりはしていません。

地巾を全部使っています。

38㎝位の布を折って、折って、折りまくって衿巾にしています。

通常の衿折りはこうです。

 

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細かくなってきたので拡大
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この形状で身頃に付いています。

わかるかな?

わっかんないだろーなー。

自分でも本当に正しいかどうか怪しい(´・_・`)

仕立て上がった時に見えるのは、図の1番手前の1枚と、1番奥の1枚だけです。

布のほとんどが衿の内側に入り、衿の芯になっています。

羽織を持っている人は衿を触ってみてください。

かなり厚みがあるはずです。

衿先の部分は、丈方向の縫い代も入っているのでパンパンです。

 

今回は羽織の衿は長着の衽で作るので半巾分しかありません。

これではしっかりした衿になりません。

本来なら長着の本衿と掛衿が余っているので、それも縫い合わせて丁度良い状態になります。

 

しかし、今回は袖に割りを入れたために本衿も掛衿も余っていません。

そこで今回は黒い新モスを使うことにしました。

衿が出来上がった時はこの新モスの部分(本来なら本衿と掛衿の部分)は衿の内側に入ってしまうので見えなくなります。

布の厚みを考慮して、新モスの巾は控えめにしました。

実際に作った衿はこの様な構造になりました。

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先ほどの4枚目の写真と同じ段階の図です。

比べると布の量がすこし少なくなっています。

 

衿付け

衽を繋ぎ合わせた部分は丁度中心になるように付けました。

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赤矢印が身頃の背中心で、青矢印が衿の接ぎ目です。

着る時はこの部分は半分に折って着ます。

意識して見れば分かりますが、そうでなければ気付かないと思います。

 

袖付

男物の羽織の袖付は長〜い。

 

完成!

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ぱっと見では長着から仕立て替えたとは思わないでしょう。

袖の割り入れも目立ちません。

長着としては着ることが難しかった古着が仕立て替えることで羽織に生まれ変わり、活用することができるようになりました٩(ˊᗜˋ*)و✧*。

 

4回にわたって長着から羽織への仕立て替えをご紹介しました。

状況に応じて仕立て方を変化させます。

それが可能なのは直線に裁ち、縫い代を残しているからです。

これが和裁なのですよ✨

 

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